【船場の銘店FILE Vol.2】87歳の双子姉妹が営む 魚とカレーが人気の老舗食堂
2020/10/16
十代橘
Lunch time 11:30~13:30、18:00~20:30
船場の銘店FILE
Vol.2
生まれてすぐに離れ離れ 双子と知ったのは成人後
早朝4時の南船場。昼間の活気が嘘のような静寂が広がる街に、2人の小柄なおばあちゃんが現れ、仕込みを始める。よく見ると、その顔はうり二つ。
40年続く老舗食堂「十代橘」を営むのは、1933年2月4日生まれの十代都喜子さん、葛野都司子さんの双子姉妹で、南船場の“レジェンド女将”として親しまれている。「今が一番幸せ」と話す2人の人生は波乱万丈だった。
生まれた当時、「双子は縁起が悪い」をされすぐに離れ離れに。7歳のころに一緒に住みだすが、双子という事実を知ったのは成人してから。それぞれが結婚後、1975年に都喜子さんは借金をして「十代橘」を創業。都司子さんは夫の会社経営がうまくいかず借金が残り、60歳近くにして「十代橘」を本格的に手伝うこととなった。
87歳の今も毎日店に立ち続けるが、都喜子さんは81歳でガンが見つかり手術。現在も闘病中ながら、「店はいっぺんも休まへん。そんなしんどないで~」と、笑顔を見せてくれた。
カレーから弁当や惣菜まで 手作りにこだわり続ける
4時に出勤すると、早速仕事に取り掛かる。人気の弁当や惣菜は全て手作りがウリ。毎週金曜日限定のカレーも毎回味が変わるという。
「40年以上店を続けてたら、いろんな人がいろんなもんをもってきてくれんねん。
ええもん使うようにしてるし、いつも食べに来てくれる人も多いから、毎度同じ味じゃつまらんやろ?」
現在は都喜子さんの長男、隆司さんと3人で仕込みや調理を行なっている。特に隆司さんが市場から仕入れてくる鮮魚が評判で、日替わり定食もその魚を生かしたものが中心だ。
「夜は隆司に魚を調理してもらって、私らは馴染みのお客さんとこ回って一緒に飲んでんねん(笑)。コロナの影響で、いっときは常連さんも半分になったけど、今は7割ぐらい戻って来てくれたかな。ほんまありがたいわ」
2週間に一度ほど、生まれた実家に2人で帰って、食べて飲んで過ごすことが何よりも楽しみだという。願わくば10年、20年と南船場の移り変わりを見守り続けてもらいたい。
金曜日限定のカレー¥730(持ち帰りは¥600)は、ダシの優しい風味にスパイスが効いた深みのある味わい。スジ肉などから一品選ぶトッピング、スープ、箸休め2品が付く
都喜子さん ( 左 )、都司子さん ( 右 ) の仲よし姉妹。「毎日メニューは替えるから、ウチには名物なんてないわ。煮物もバラ寿司もハンバーグも、昔から続けている“一から全部手作り”が『十代橘』の味やね」
日替わり定食 ¥730。「ええもんを食べさせてあげたいから」と、メニューが決まるのは食材を仕入れてから。魚を中心としたメインに、味噌汁、箸休め2品、香の物がセット。40年以上の経験から、献立は全く不自由しないそうだ
創業当時から変わらないノスタルジックな店内。日替わり定食は、黒板に書いてあるメインを選んでオーダーする
「菜っ葉の炊いたん」など、店頭に並ぶ惣菜は¥120 ~。正午には店の前に行列ができる
十代橘
Lunch time 11:30~13:30
大阪市中央区南船場2-7-20
TEL 06-6262-7255
時間/11:30~13:30、18:00~20:30 休み/土・日曜、祝日
席/25席 電子マネー/PayPay